妻に浮気がばれ別居を始めたことで、金銭苦となり、どん底生活を余儀なくされてしまった公務員男性と、彼の家族との愛と再生の物語。「離婚でホームレス」という実際の新聞記事から着想が練られている。安定した職がありながらも、ホームレスになる。「新たな貧困」が急増するイタリア、ローマの社会現状にも触れながら、いつ何時、人生が転落してしまうか分からない現実の厳しさと人間の心の甘さを、アンバランスな関係にある一組の家族の姿を通し痛烈に描き上げた。
主演のヴァレリオ・マスタンドレアの演技は絶品。段々と崩れ落ちてゆく人間の悲壮感、落ちぶれ感、情けない父親像を寡黙に演じ上げた。地味ではあるが心に残る作品だ。