「食」の映画から「衣」の映画へ。「しあわせのパン」「ぶどうのなみだ」の三島有紀子監督の最新作は、オーダーメイドの服にこだわり続ける仕立て屋の女性を主人公に「服」と「人」との関係を描いた癒しの物語。渡辺葵さんの大人気コミックを実写映画化し、夢みる世界へと誘ってくれる。先代(祖母)から受け継ぐ「一生ものの服」を頑なに守り続け、神戸で洋裁店を営む市江。好青年の藤井と出会い、“先代の服”ではない、世界にひとつだけの“自分の服”作りに目覚めていく。
燐とした佇まい。柔らかな雰囲気とは裏腹に意外に頑固。中谷美紀の市江役は、はまり役。衣裳や建造物、ロケセット等、明治・大正浪漫のレトロな気分が味わえるのも良い。
©2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会