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「ゆれる」「ディア・ドクター」などを代表作にもつ西川美和監督、4年ぶりの待望の最新作。すべてオリジナル脚本で勝負し、作家としても活躍中の西川監督だが、本作「永い言い訳」もまた二度目の直木賞候補となった自身の小説を映画化したもので、監督自ら“自分の人生の集大成”であると断言した。妻が死んでも一滴の涙も流せなかった男の“永い言い訳”を綴った傑作。時の流れ、人との交流を通し変わっていく“男の心”。温かく自然体に、鋭い洞察力で見つめる監督の力量。圧巻だ!
人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、妻が旅先で親友と共に不慮の事故死を遂げたと知らせを受ける。妻が死んだというのに涙一つ流さず、世間的には悲劇の夫を演じる男が、ある日妻と一緒に亡くなった親友の遺族と出会う。体裁を気にし、自分の弱さや醜さを誤魔化しながら生きてきた傲慢男が、心のままに生きる親子と出会ったことで、凍った心に血が通い始める…。主人公幸夫に本木雅弘。「おくりびと」以来、7年ぶりの主演作で、人間の醜態をさらけ出した役柄を熱演。新境地を開いた。
人間とは他者との関わりがあってこそ成立する。自分を愛してくれる人を蔑ろにしてはいけない。そんな人生の教訓に心が響く。共演者竹原ピストルの素朴さも印象に残った。
©2016「永い言い訳」製作委員会
銭湯を舞台に、裸(本音)でぶつかり合う家族の愛の物語。主演の宮沢りえが、母心がいっぱいに詰まった強くて温かい母親役を熱演。監督は自主制作映画「チチを撮りに」で世界的に高い評価を得た中野量太。自身が手掛けたオリジナル脚本で商業映画デビューを飾った。余命宣告された母親が、残された家族のために死ぬまでに絶対にやっておくべきことを決め一つづつ実行していく日本版「死ぬまでにしたい10のこと」が誕生。湯を沸かすほどの熱い情熱が感じられる感動作に仕上がった。
銭湯「幸の湯」を営む幸野家。だが1年前に店主が湯気のごとく蒸発し、銭湯は休業中。母の双葉は人情、愛情に溢れた“肝っ玉母ちゃん”。パン屋のパートで娘を育てている。だがそんな母ちゃんに突然のガン宣告、余命を告げられた。そしてその日から母ちゃんの“死ぬまでにしたいこと”が実行される…。死にゆく母の“湯を沸かすほどの熱い愛情”を受け、残された者たちの家族の輪が広がっていく。若手女優、杉咲花が母を亡くす娘の心情を好演、オダギリジョーのお気楽父ちゃんも好印象。
湯が沸いてしまうくらいに熱い熱い母性愛。何かをしてあげたいと思うのは、それ以上のことをしてもらったら、という興信所の滝本(駿河太郎)の台詞にじーんときた。
©2016「湯を沸かすほど熱い愛」製作委員会
記憶を失った最強の暗殺者ジェイソン・ボーン。マット・デイモンが主演した3作以来9年ぶりにシリーズ復帰したアクション作品。 世間から姿を消してひっそりと平穏に暮らしていたジェイソン・ボーンのもとに、CIAの元同僚のニッキーが現れ、CIAが世界の情報を把握し監視・操作するために極秘プログラムを始動させたこと話す。そしてボーンにまつわるある真実を告げる。事の重大さを感じたボーンは制止させるため再び動き始める。
ボーンの追跡を任されたCIAエージェントのリーは、ボーンを組織に取り込むことを画策するのだが・・・。 定番のアクションは健在。超A級のサスペンスに仕上がっている。
©2016. Universal Pictures
「パラノーマル・アクティビティ」を手がけたジェイソン・ブラム製作の心理サスペンス。心気一転を図るため夫の地元に引っ越してきたサイモン夫婦。ある日買い物中に夫の同級生と名乗るゴードが現れる。再会を喜ぶゴードは翌日引越しお祝いにと、1本のワインを届ける。その日から徐々にゴードからのギフトはエスカレートしていく。「過去のことは水に流す」とサイモンに話すゴード。二人の不安な過去が明かされないまま夫婦のまわりには次々と異変が起き始める・・・。
衝撃の真実を知った時、人は一度抱いた疑念は永遠に消えない。心に響く恐怖とはこの映画のような結末なのかもしれない。傑作である。
© 2015 STX Productions, LLC and Blumhouse Productions, LLC. All Rights Reserved.
闇金業者の裏社会を描いた人気漫画原作の映画化作品シリーズ最終作。 違法な金利で金を貸す金融屋「カウカウファイナンス」の丑嶋馨のもとに、中学の同級生・竹本優希が訪ねてくる。しかし丑嶋は、「友達としてなら貸さない。顧客としてならトイチで貸す」と冷たい。竹本は街で会った男に仕事を斡旋されるが、それは賃金をピンハネする貧困ビジネスだった。そこを仕切るのは丑嶋と因縁の鰐戸三兄弟。そして債務整理でもうける弁護士が丑嶋の顧客に食らいつく・・・。
丑嶋のライバル犀原茜や鰐戸三兄弟など丑嶋が封印した12年前の因縁が明らかになる。
©2016真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」製作委員会
前作から10年を経てキャストも一新し「デスノート」が映画化される。 今回のキーワードは「夜神月、復活」「Lの後継者」「弥海砂」「死神の目」「ノートの封印」。 デスノートを使い多数の凶悪犯を整理し続けた夜神月と、彼を追い詰めた天才Lの闘いから10年後。またしても死神の世界から6冊のデスノートが人間界に持たされた。それを手にした所有者により、世界中で新たな混乱が起きていた。夜神総一郎が設立したデスノート対策本部とLの後継者を名乗る探偵は、
動き出した夜神月の後継者のサイバーテロリストとデスノート争奪の争いが始まのだった・・・。 原作の世界観を継承し、先の読めない展開とキャラクターに注目。
©大場つぐみ・小畑健/集英社 ©2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS
34歳の娘と54歳の恋人、そして74歳の娘の父親の奇妙な共同生活を軽快に描くホーム・ドラマ。第8回小説現代長編新人賞を受賞した中澤日菜子による同名小説を「タカダワタル的」「百万円と苦虫女」の女性監督タナダユキが映画化。お父さんと伊藤さん(恋人)の間に挟まれ、どっちも選べない娘、彩の気持ちを代弁した。また、高齢化社会を象徴するシビアな一面を覗かせながらも、ひとつ屋根に暮らす者同志に芽生える“情”の強さに“ほっこり”。素晴らしいドラマが誕生した。
娘の彩は、アルバイト先で知り合った年上の伊藤さんと同棲中。“ある秘密”が原因で兄夫婦の家を追い出されたお父さんが突然彩の家にやって来た。元小学校の教師で頑固者。嫌々始めたお父さんと伊藤さんとの3人暮らしだが、いつのまにかけがえのないものになっていく…。娘の彩に上野樹里。飄々として不思議なオジさんの伊藤さんにリリー・フランキー。典型的くそジジィのお父さんに藤竜也。3人とも魅力的ではまり役。会話の掛け合いもナチュラルに展開、楽しませてもらった。
「のだめカンタービレ」から脱却。等身大女性をのびのびと演じた上野樹里さん。伊藤さんとお父さん(リリーさんと藤さん)の婿VS舅のやりとりも予想外で面白かった。
©中澤日菜子・講談社/2016映画「お父さんと伊藤さん」製作委員会
一つのことを極めるのではなく、何でもいいから一等賞をとりたい男の七転び八起き人生の物語。原作、脚本、監督、主演は内村光良。「ピーナッツ」「ボクたちの交換日記」に続く3本目の監督作となる本作は、2011年に上演された自身の一人舞台「東京オリンピック生まれの男」が原案。映画監督、俳優、司会業とあらゆるジャンルで頂点に立ちながらも、お笑い界の“金メダル”をとりたいというブレない芸人魂。代表作にしたいと意欲に燃える本作で分身的主人公秋田泉一を誕生させた。
東京オリンピックで日本中が沸いていた1964年に産声をあげた秋田泉一。小学生の時に徒競走で一等賞をとったことが“カイカ~ン”になり、以来、あらゆるジャンルで一等賞に輝く“金メダル男”となっていく。だが思わぬ人生の落とし穴に落ち、その度に奮起。なんでもいいから金メダルが欲しいという情熱で人生を渡り歩くのだ。オトナ泉一に内村光良、ヤング泉一にHey!Sey!JUMPの知念侑季(坂本竜馬のパーフォーマンスは見事)その他豪華キャストが交互に登場する。
泉一が生まれ育った時代の流行歌と時事ネタを盛り込み、楽しい伏線を張りながら金メダル男の波乱万丈の人生を綴る、特にウッチャン世代にウケること間違いなしの一作だ。
©「金メダル男」製作委員会
La femme de la plaque argentique
ヨーロッパを中心に高い評価を得ている黒澤清監督が、オールフランスロケ、外国人キャスト、全編フランス語のオリジナルストーリーで挑んだ初の海外進出作品。世界最古の写真撮影方法“ダゲレオタイプ”の不思議さに興味を抱いた監督が、ダゲレオタイプのエゴイストな写真家とモデルである彼の娘に翻弄される若い男の怪奇で幻影的な悲劇的愛の物語を作り上げた。永遠の命を宿すというダゲレオタイプの女に惹かれ破滅の一途を辿る主人公に「ある過去の行方」のタハール・ラヒム。
ゴシックホラーの趣きを放つクラシカルで耽美な新しい黒澤の世界を、チャーミングな女優コンスタンス・ルソーをはじめヨーロッパを代表する豪華スター陣が体技した。
© FILM-IN-EVOLUTION - LES PRODUCTIONS BALTHAZAR - FRAKAS PRODUCTIONS – LFDLPA Japan Film Partners - ARTE France Cinéma
第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞受賞作。郊外で小さな工場を営むごく普通の家族が、夫の旧友で前科者の男との奇妙な共同生活をしたことで「罪と罰」を背負うことになる贖罪の物語。最後まで途切れない集中力と緊張感。鋭い洞察力でどっと心に重く圧し掛かる新しい「家族のドラマ」を描き上げた新鋭、深田晃司監督は、本作でカンヌ初ノミネートにて初受賞を果たし、30代の若さながら、カンヌ常連監督の黒澤、是枝、河瀬の名監督に続き、その座をキープした。
郊外で小さな工場を営む鈴岡利雄・章江夫妻と一人娘・蛍のもとに、ある日夫の旧友、八坂が訪れ、奇妙な共同生活が始まる。礼儀正しく温厚な八坂に次第に好意を抱くようになる妻。八坂に何故か負い目を感じている利雄は、二人のただならぬ様子にも気づかないふりをしていた。だがついに八坂の正体が現われ、一家に残酷な爪痕を残し姿を消す。八年後、皮肉な運命の巡り合わせが、一家を再び崖っぷちに立たすことになる。贖罪の果てに辿り着くその“淵”には光が見えるのか…。
穏やかさと鋭さを操る浅野忠信の狂気さに身震いする。古館寛治、筒井真理子も淵に立たされた人間の境地を見事に体技。皆、瞬きするのも惜しくなる素晴らしい演技だった。
©2016「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMAS
モバイル史上最多記録を誇る大人気ゲーム「アングリーバード」が「怪盗グルーの月泥棒」のスタッフにより、最新3Dアニメーションとしてバージョンアップ!そこは飛べない鳥たちが平和に暮らす島“バードアイランド”。怒りん坊鳥のレッドと仲間たちが、島の宝物である“卵”を盗みにやって来た“緑ブタ軍団”をやっけるため一致団結!怒りをパワーに変えた鳥たちの「愛」と「冒険」と「怒り」の闘いが始まる…。嫌われ者から島のヒーローとなっていくレッドの成長ぶりが感動的だ。
カラフルでパワフルな映像描写。愉快なキャラクター。ゲームの世界を飛び出した家族揃って楽しめる一級エンターティメント。レッドの日本語吹替えに坂上忍。はまり役だ。
©2016 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
大ベストセラー「ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日」の映画化で、現実を見据え愛するがゆえに辛い決断をした男女の物語。イギリスの田舎町。職を失ったルイーザの新しい仕事は、バイク事故で車椅子生活を余儀なくされた青年実業家ウィルの“六ヶ月間期間限定”の介護ヘルパーだった。最初は冷たく当たるウィルだったが、彼女の明るさが頑な心を溶かし、互いが大切な存在となっていくが…。六ヶ月限定という下りが物語の鍵を握る、本年度全米で最もヒットしたラブストーリー。
エミリア・クラークの健康的なキャラクターが印象的。彼女が着こなすポップなファッションにも注目したい。超イケメン俳優サム・クラフリンもずーっと眺めていたい。
© 2016 Warner Bros. Entertainment Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved
THE MAN WHO KNEW INFINITY
新鋭マシュー・ブラウン監督が映画化。出演は「スラムドッグ$ミリオネア」のデヴ・パテル。 1914年イギリス・ケンブリッジ大学の数学者ハーディのもとにインドから一通の手紙が届く。その内容は人類が驚く数式の発見であった。独学で数学を学び、“アインシュタイン並みの天才”と称えられるインド人数学者ラマヌジャン。
インドの名もなき事務員というラマヌジャンの身分を承知で見出し、共同研究に人生を懸ける英国人数学者G.H.ハーディ。 国籍や身分を越えた二人の出会いが人類の歴史を変える大発見とつながるのだった・・。
©2015 INFINITY COMMISSIONING AND DISTRIBUTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
イタリア・ミラノ郊外を舞台に描かれる人間の値打ちについての物語。監督はイタリアの名匠パオロ・ヴィルズィ。ステファン・アミドンの傑作小説「Human Capital」から発想を得て、舞台をアメリカからイタリアに置き換えストーリーを脚色した。クリスマスイヴ前夜、イタリア・ミラノ郊外で起きたひき逃げ事故をきっかけに浮かび上がる人間の欲望。映画は、複雑に巧妙に交錯する時間軸の中、上流・中流・下流階層の人たちの個々の言動を追い、事故との関係性に迫っていく。
何が人間の価値を決めるのか。満たされた人生とは?上品質なサスペンス劇であり、人間にとっての大切なものを問う社会派ドラマ。イタリア・アカデミー賞7部門受賞作品。
©2013 Indiana Production Company Srl/Manny Films
今年11月、豊洲への移転が決まった東京都中央卸売市場築地市場。日本の台所と言われるその歴史は江戸時代まで遡る。日本橋にあった魚河岸は、関東大震災を機に移転し現在に至る。その築地市場の承認を得て1年以上の長期にわたり初めて撮影を敢行、一般の人は踏み入れることのできない築地が明らかになるドキュメンタリー。 築地市場で働く仲卸の人々、卸業者、毎日通う料理人との間で繰り広げられるプロ同志の真剣勝負の姿。四季折々の魚と刻々と変わりゆく築地の息遣い。
様々な角度から伝えられる築地市場と世界のトップシェフから、旅行者まで世界中の人々を魅了する“TSUKIJI”のオンリーワンの真実が見える。
© 2016 松竹
「きっと、うまくいく」の監督・主演俳優が再びタッグを組み、前作以上の興行成績を叩き出した奇跡の最新作。宇宙人PKの地球での常識破りの活躍を「愛」と「信仰」を織り交ぜ描くSFヒューマン・ドラマ。歌あり、踊りあり、切ないラブ・ストーリーありの映画大国ならではのゴージャスな創り。さらに信仰心に囚われないPKの純粋な視点から複雑な宗教事情を指摘するなど、差別や偏見の問題に取り組む一面も覗かせる。主人公PK役にインドのトップスター、アーミル・カーン。
本作では驚きの肉体改造をして、ヌード・シーンにも初挑戦。さらに劇中では、一切瞬きしないという荒業で演技達者ぶりをアピール。愛嬌たっぷりの宇宙人役を好演した。
©RAJKUMAR HIRANI FILMS PRIVATE LIMITED