日本人初のヴェネツィア・ビエンナーレ&ヴェネツィア国際映画祭の全額出資を得て製作され、第72回ヴェネツィア国際映画祭マジックランタン賞とソッリーゾ・ディベルソ賞の2冠に輝いた長谷井宏紀の第一回監督作品。孤児の少女が、盲目のギター弾きと出会い自分の居場所を見つけ出すまでが感動的に描かれる。写真家でもある長谷井監督の美的センス溢れる映像には、ロケ地フィリピンのスラム街のような町並みは瑞々しく、ストリート・キッズの必死さは伸び伸びと捉えられていた。
盗みをしながら必死に生きている孤児の少女ブランカ。母親の愛を乞い“お母さんをお金で買う”ことを思いつく。盲目のギター弾きのピーターと出会った少女は、この老人から得意な歌でお金を稼ぐことを教わり、二人はレストランでの歌の仕事を得るが、順調だったブランカの身に思いもよらないアクシデントが襲い掛かる…。母親からの愛情を欲していた少女は、盲目のギター弾きの温かさに触れ、いつしか彼を父親として見つめるようになるが、その過程がナチュラルで感動的だった。
演技初挑戦のブランカ役のサイデル・ガブテロとギター弾きのピーター・ミラリを筆頭に、路上でスカウトした素人キャストの面々も実にピュア。心に響く愛らしい作品だ。
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