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第2次大戦の沖縄戦で75人の命を救った米軍衛生兵デズモンド・ドスの実話を映画化。 彼の宗教的信念は“生涯、武器には触らない”だった。戦場でも武器の携帯を拒否し上官や仲間の兵士たちから反感を買い、軍法会議にかけられてしまう。衛生兵として激戦地の沖縄の断崖絶壁(ハクソー・リッジ)へと赴く。激しい攻撃に圧され一時退却をするが、戦場に残された負傷兵を見たデズモンドは、敵味方分け隔たりなく一人で救助をし続ける・・・。
第89回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など6部門でノミネートされ、編集賞と録音賞の2部門を受賞。戦場のシーンの激しさは演出過多だが迫力は凄い。
©Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016.
カンヌでの評価が高い河瀬直美監督「魂」の最新作。ハンセン病患者を主人公に「生きること」の意味を問いかけた「あん」に続き河瀬監督が挑んだ題材は、生きる「光」。視力を失いかけたカメラマンと、視覚障がい者向けの「映画の音声ガイド」の仕事をする女性とのラブ・ストーリーが描かれる。主演は「あん」でタッグを組んだ永瀬正敏。奪われていく「光」に恐怖と不安が募りながらも、有名カメラマンというプライドを捨てきれない男の“心の曇り”を抑えた演技で表現。心を突かれた。
視覚障がい者向けの「映画の音声ガイド」の仕事をする美佐子は、会の集まりで弱視の天才カメラマン、雅哉と出会う。雅哉の無愛想な態度に苛立ちながらも、視力を奪われていく彼の葛藤を見つめるうちに、美佐子の心にある変化が生まれていく。視界の「光」を閉ざされ、盲目という辛辣な未来を抱えた雅哉と、認知症の母と失踪中の父を抱え、人生の「光」を模索する美佐子。絶望から希望へ。互いの中に「光」を見出した二人。ゆっくり静かに育まれていく愛の形。たまらなく愛おしくなった。
「愛する人を失いたくない」という監督の幼少期の境遇が投影。見た者の主観ではなく、映像に映る“ありのまま”を言葉で伝える音声ガイドという裏方の仕事も興味深い。
©2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE
中世の騎士道物語「アーサー王物語」をベースに、ガイ・リッチー監督がスタイリッシュな演出と大胆なカメラワークで描く新しいスペクタルアクション映画。 ローマ帝国の崩壊で混乱するブリテン島。王の息子でありながら両親を殺され、スラム暮らしを強いられる青年アーサー。伝説の宝剣エクスカリバーを引き抜き王の資質を証明し、勇敢な騎士たちを従え、民衆のため王座奪還に向けて立ち上がる・・・。
映画では魔法使いヴォーティガンや巨大なヘビが猛スピードではい回るなど、ファンタジー要素も含めたアトラクションも楽しめる。
© 2017 WARNER BROS. ENT. INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED AND RATPAC-DUNE ENT. LLC
マーベル・コミックの映画『X-MEN』シリーズの代表的なキャラクター、ウルヴァリン・ローガンのスピンオフ第3作。ヒュー・ジャックマンの出世作となったキャラクターだけに今回が最後の出演は寂しい限り。これまでとはちょっと違う哀愁漂う演技に涙してしまう。 2024年メキシコ国境付近。不死身の治癒能力が弱まり普通の人間として暮らしていたローガンとアルツハイマーを患い記憶が薄れたプロフェッサー。ナサニエル・エセックス率いる闇の組織から逃亡した若いミュータントがふたりの前に現れる。
彼女はローガンのクローンとして生まれた少女ラウラ・キニー。絶滅の危機にあるミュータントの唯一の希望キニーを守るため、命をかけた壮絶な最後の戦いが始まる・・・。
©2017TWENTIETH CENTURY FOX.
2012年の韓国映画「殺人の告白」をリメイクしたクライムサスペンス。 1995年、同一犯による5件の連続殺人事件が起こる。すべての犯行の特徴は、背後からの絞殺する瞬間を被害者と親しい者に見せつけ、目撃者は殺さないというルールだった。捜査担当の牧村は一度は犯人を逮捕寸前にまで追い詰めるたが、逆に犯人の逆鱗に触れ上司を殺され、事件は未解決のまま時効を迎えてしまう。そして事件から22年後、犯人を名乗る男・曾根崎が執筆した殺人手記とともに突然姿を現す・・・。
オリジナルとは別のラスト展開に製作陣のこだわりを感じる。出演陣の個性が生きた演技は必見。
©2017 映画「22年目の告白 私が殺人犯です」製作委員会.
1990年代に実際にあったBre-X事件”を基にしたクライム・サスペンス。 鉱山ビジネスに失敗し破産寸前のケニーは、人生のすべてを懸けてインドネシアのジャングルに挑戦し、生死の危機に瀕しながら今世紀最大の巨大金脈を発見。彼の会社は奇跡の復活を果たし、全米メディアから注目。ウォール街や投資家が集まってくる最中170億ドルの金塊が一夜にして消えるという衝撃のニュースが報じられる。一体何が?
主演は「ダラス・バイヤーズクラブ」でオスカーに輝いたマシュー・マコノヒー。前作ではHIV患者を演じるため21キロ減量を図ったが、今回は主人公ケニーの特徴である禿げ上がった頭髪にメタボ腹に変身。役者魂が凄い!
©Photo by Lewis Jacobs
戦国時代に華道の祖、池坊専好が親友の茶人・千利休を自害に追いやった豊臣秀吉に華道で戦いを挑むエンタテインメント時代劇。 織田信長が本能寺の変で討たれ、豊臣秀吉が天下人となった16世紀末。戦乱は治まりつつあったが秀吉の圧政に民衆はを苦しめられていた。花僧の池坊専好は、そんな思いを感じ民衆の先頭に立ち花の美しさを武器に秀吉に戦いを挑む。
世界に広がる“いけばな”の祖、池坊専好の権力にも世俗にも興味を持たず、ただ花をいけることにのみ無上の喜びを感じる姿を野村萬斎が熱演。独特の喋りは時代劇が合う。
©2017「花戦さ」製作委員会
「相棒」の水谷豊が40年前から温めていた天才タップダンサーの企画を、自ら初メガホンをとり映画化したショービジネス感動ドラマ。 天才ダンサー渡は不慮の事故が原因で引退し、10数年を経た今は酒におぼれる毎日を送っていた。そんな渡の元に旧知の劇場支配人・毛利が訪れる。「最後のショーを演出してほしい」という相談を持ちかけられ、渋々依頼を引き受ける渡。 早速オーディションを行うと、さまざまな事情を抱えたダンサーたちが集まってくる。 若いダンサーの熱意から渡の止まっていた時間が動き出す・・・。
60歳を過ぎて監督に挑戦した水谷豊監督は、若い頃見た本場のブロードウェイの感動を再現すべくこだわりのタップの映像が心に響く。
©2017 TAP Film Partners.
2013年に発生したボストンマラソン爆弾テロ事件の逮捕までの真相を描いたクライムアクション。タイトルのパトリオット・デイとは4/15の愛国者の日を指す。 2013年4月15日。歴史あるボストンマラソン大会は50万人の観衆で賑わっていた。次々と走者がゴールインする中、突如大爆発が発生する。煙が立ち込め悲鳴の中、血を流し負傷者たちが折り重なって倒れていく。警備していた刑事トミーらボストン警察スタッフは驚きながらも救護活動を開始する・・・。
実際にあった爆破テロ事件解決までの裏側を丁寧に描いているが、犯人特定までのやりとりや大事件の割には計画性のない衝動テロの犯人の素性があまりに普通で驚く。
©2017 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved
難病の母親と暮らす13歳の少年と「怪物」との3つの物語からなる「魂の駆け引き」の物語。英国史上初のカーネギー賞とケイト・グリーナウェイ賞をW受賞した英文学最高傑作を「パンズ・ラビリンス」の製作スタッフが映画化。「ジェラシック・ワールド」の最新作を務めるJ.A.バヨナ監督がメガホンを撮り、幻想的おとぎ話の世界にゴシック調の色合いを添えたダーク・ファンタジーが完成。アニメと実写の融合、写実的な「怪物」も興味深い。少年役ルイス・マクドゥーガルも健闘。
フェリシティ・ジョーンズ、シガニー・ウィバーなど演技派キャスト、さらにリーアム・ニーソンが怪物の声と自身初となるモーション・キャプチャーを演じた注目の一作。
© 2016 APACHES ENTERTAINMENT, SL; TELECINCO CINEMA, SLU; A MONSTER CALLS, AIE; PELICULAS LA TRINI, SLU.All rights reserved.
人柄も良く仕事も出来て、その上ハンサムでお金持ち。何一つ申し分のない男性アレクサンドルが意中の女性ディアーヌのハートを射止めるために足りないもの、それは背の高さだった…理想の男性体型像とは真逆な人に恋をした女性が、周囲の目を気にして素直に飛び込んでいけないもどかしさと、自分の弱点を長所にしてアプローチする男性の度量の大きさ。逆身長差カップルの恋の行方を左右する「男の価値」についてを小洒落た南仏を舞台にリズミカルに謳い上げる大人のラブストーリー。
「アーティスト」でアカデミー賞®主演男優賞を受賞したジャン・デュジュルダンが136cmの小男に挑戦!相手役ヴィルジニー・エフィラと共にチャーミングに演じた。
©2016 VVZ PRODUCTION-GAUMONT-M6 FILMS
俳優・向井理の祖母・芦村朋子が半生を綴った手記「何日再来」を、向井自ら書き起こし自費出版。映画化に向け7年の歳月をかけ、企画し主演も果たした意欲作。戦前・戦後の混乱の時代。幾度の不運に見舞われながらも、妻として母として強く明るく生きた祖母と家族の愛の実話が描かれる。監督は「60歳のラブレター」の深川栄洋。戦後の“ごく普通の暮らし”の中から、夫婦にとっての“幸せな人生”を感動的に映し出した。若き頃の朋子役に尾野真千子。祖父(夫)役に向井理が演じる。
「何日君再来(ホーリージュンザイライ)」とは夫婦を繋ぐ曲のタイトル。日本での曲名は「いつの日君帰る」。「今宵別れたら、いつまた、君と逢えるだろう」という意味。
©2017「いつまた、君と 何日君再来」製作委員会
芥川賞作家藤沢周氏原作「武曲」を映画化。タイトルの武曲とは、 “武士”と“音楽”の交わりのことで、北斗七星の中の星の名から取っている。これは剣道に人生を懸けた男と、現代の音楽で育った若者との共通の無い男同士が剣道を通じて対決する様が二連星のような関係とみれる。 神奈川・鎌倉。剣道五段の腕前を持つ矢田部研吾は、父との対決がきっかけでアルコール漬けの自堕落な日々を送っていた。 “殺人剣の使い手”と言われたのも過去のことで今はしがない警備員で生活をしのいでいた。
ある日恩師が見つけてきた剣道には素人の高校生が剣道対決で矢田部から奇跡の一本を取る・・・。 役作りのために限界まで鍛え上げた肉体と精神力を魅せる綾野剛と、天賦の才能を開く村上虹郎。新旧の若手対決は注目。
©2017「武曲MUKOKU」製作委員会
「モダンダンスの祖」と呼ばれた伝説のダンサー、ロイ・フラーの実話を映画化。19世紀末のフランス。自ら演出・振り付け・舞台装置や衣裳などを考案し「シルクと光のダンス」というオリジナルダンスで新時代を切り開いたロイ・フラー。映画は彼女のダンス人生に欠かすことの出来ないドルセー伯爵、イサドラ・ダンカンなどの人物との関係や、華麗な舞いの裏に隠されたアスリート並のハードな訓練風景などを織り交ぜ、女優からダンサーへと開花した彼女の愛と情熱の半生を描く。
ロイ役のソーコ。体力の限界に挑んだダンスに魅せられる。ライバルのイサドラ役にジョニー・デップの娘リリー=ローズ・デップ。親譲りの才能と美のオーラに目を惹いた。
©2016 LES PRODUCTIONS DU TRESOR - WILD BUNCH - ORANGE STUDIO - LES FILMS DU FLEUVE - SIRENA FILM
イランの巨匠アスガー・ファルハディ監督最新作。2011年の「別離」に続き、2度目のアカデミー賞(R)外国語映画賞に輝いた。事件性の孕んだ緻密な心理サスペンスドラマが主流のファルハディ作品。今回もある事件をきっかけに破滅へと辿る夫婦のスリリングなドラマが描かれる。小さな劇団の俳優として活動する若き夫婦。夫の留守中、妻が何者かに襲われた。一刻も早く犯人を見つけ出したい夫と、事件を表沙汰にしたくない妻。やがて事件は予想外の方向へと進んでいく…。
復讐に燃えた夫の過激な行動。食い違う夫婦の感情。意外な事件の展開と衝撃的結末。犯人捜しのスペンス劇と、夫婦の心理ドラマが絶妙に絡み合う究極のドラマ。流石だ。
©MEMENTOFILMS PRODUCTION - ASGHAR FARHADI PRODUCTION - ARTE FRANCE CINEMA 2016