愛する人を事故で亡くしたドイツ人ケーキ職人の男性と、夫を亡くしたエルサレムのシングルマザー。偶然にも同じ男性を愛し悲しみにくれる男女が、信仰心の強いイスラエルで巡りあい、ケーキ作りを通して惹かれあう愛と許しの物語。低予算映画でありながら、その素晴らしさが高く評価され数々の映画賞を受賞したイスラエルの新鋭オフィル・ラウル・グレイツァ監督。信仰心の強い父とそうでもない母の間に生まれ育ち、自らもゲイを公表する彼が、知人の妻から聞いた話をヒントに、構想8年の末描き上げた自信作である。
映画はベルリンのカフェで働くケーキ職人トーマスと、エルサレムから出張でよくこの店を訪れる妻子あるオーレンが愛を育むシーンから始まる。だが突然のオーレンの事故死により、トーマスはエルサレムでカフェを経営するオーレンの妻アナトを訪れるという話になっていく。国籍や文化・宗教や性別を超えた人間愛がテーマであるが、お国柄の信仰色を無視することは出来ない。だが信仰や食の規制が厳しい国で外国人や料理人が暮らすことの難しさや、“食”こそが人と人を繋ぐ材料となり諸問題解決の糸口になることを教えてくれる。
秘密を抱えたケーキ職人を複雑に演じたドイツのティム・カルクオフと、イスラエル人気女優サラ・アドラーの年の差共演も魅力的。宗教や同性愛など色んな隠し味が楽しめる美味なる作品。
© All rights reserved to Laila Films Ltd.2017