ひきこもりの長男が「自死」し、そのショックで記憶を失くした母。父と娘は母の笑顔を取り戻すため兄は「生きている」と「嘘」をつく…。橋口亮輔、石井裕也、大森立嗣ら名監督の助監督を務めたてきた野尻克己監督の劇場映画初監督作で、自身の経験を基に脚本も手がけたオリジナル作品。大切な家族の「死」。しかも自ら選んだ「死」だとしたら残された遺族は、その「死」とどう向き合えばいいのか…。シリアスなテーマであるが、絶対に喜劇にすると公言した野尻監督の強い意志のもと、笑いを添えた家族奮闘記が出来上がった。
鈴木家の長男の突然の「死」。何故息子は死んだのか。多くの謎を残し旅立った息子。記憶を失くした母のため、娘は完璧な「嘘」工作を開始する傍ら、自らも心のケアのためサポートセンターに通う。父は息子が残したいくつかのヒントを頼りに死の真相究明に奔走する。大切な人の死を目の当たりにし、気持ちの整理がつかないでいる鈴木一家。映画は、悲しみを受け入れ、もがきながらも再生していく家族の物語であるが、家族団欒を知らずに育った監督の経験からなのか、父、母、娘の個々の立場から「心の傷」を深く掘り下げている。
岸部一徳、原日出子。加瀬亮、「菊とギロチン」の期待の新星、木竜麻生が扮する滑稽で愛すべき鈴木家。さらに親戚役の岸本加世子、大森南朋がコミカル路線の演技で「笑い」を誘っている。
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