今年2月に急逝した大杉漣の初プロデュース作にして最後の主演作。大杉さんは死刑因の心の救済につとめ、彼らが安らかに最期を迎えられるよう導く教誨師(ちょうかいし)役を演じている。映画はほぼ教誨室という面会室で、教誨師と死刑因との会話劇で展開されるが、光石研、烏丸せつこ、古舘寛治などが演じる猛烈な個性をもった死刑因との「生と死」「贖罪」を意識した魂のやりとりに圧倒される。中でも劇団“柿喰う客”の玉置玲央のリアルな風貌は、本当の殺人犯のように見えたし、ホームレス死刑囚役の五頭岳夫も印象を残した。
膨大なセリフ量を見事にこなし、心に傷をもつ教誨師を全身全霊で演じきった大杉漣さん。監督・脚本は死刑に立ち向かう刑務官を描いた「休暇」の脚本で評価された佐向大が務めた。
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