ビックコミックスピリッツに連載されていた新井英樹の傑作漫画の映画化。嫁不足に悩む農村で、いまだかつて女経験ゼロの40代男性が、フィリピン娘を嫁にもらったことで巻き起こる家族の狂乱劇。息子と嫁と姑の壮絶な愛のバトルは一瞬たりとも目が離せない。監督は、この原作を“最も影響を受けた漫画”と公言する吉田恵輔。絶頂期の園子温を彷彿とさせる、エロスあり、15R指定ギリギリの描写あり、放送禁止用語連打の純愛バイオレンスを堂々完成させた。安田顕、ナッツ・シトイ、木野花。役者もまた、いい仕事をした。
42歳のチェリー・ボーイ、穴戸岩男の嫁はフィリピン娘アイリーン。花嫁がフィリピーナと知り母は激怒、“ライフル銃”を片手に息子に相応しい嫁探しを画策。一方、愛よりも金目的で結婚したアイリーンだったが、岩男のひたむきな愛に触れ心の距離を縮めていく。だが塩崎というヤクザとの出会いをきっかけに、岩男の純愛は次第に狂暴化する…。息子は嫁を愛し、嫁は金を愛し、姑は息子を溺愛する。怒涛のこどく展開する狂乱の愛のドラマの結末は、それまでの危険な描写をすべて帳消しにしてしまう、感動の涙が待っていた。
無口な男が狂変。安田顕の怪演も見事だが、木野花の母親役は絶品。恐怖心を煽る狂演は、紛れもなく助演女優賞ものだ。アイリーン役ナッツ・シトイのおきゃん娘もチャーミングだった。
©2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ(VAP/スターサンズ/朝日新聞社)