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中島美嘉の大ヒット曲「雪の華」から生まれた珠玉のラブ・ストーリー。余命宣告を受けた女性と、ガラス工芸家を目指す男性の“期間限定の恋”を描く。一言で言えば「難病もの」で、期待を裏切らない100%王道的ストーリーが展開するが、主演の中条あやみと登坂広臣がとても魅力的でつい惹きこまれてしまう。特に中条あやみの可愛さ、いじらしさ、そして華々しいスター・オーラの眩しさに心奪われる。これこそが主演女優。綾瀬はるか以来の同性からも好かれる女優の登場と言えるだろう。
幼い頃から難病を抱え、夢を見ることを諦めていた女性・美雪。余命宣告を受けた日、ひったくりにあった美雪を助けてくれたのは、妹弟の面倒をみながらガラス工芸家を目指す悠輔というワイルド系男性だった。悠輔から「声」だして言わなければ何も伝わらないと教えられた美雪は、一生分の勇気を振り絞り、百万円を渡す代わりに期間限定の恋人になってくれるように頼むのだった…。本編の1/2を北欧フィンランドで撮影。爽やかな夏と、オーロラと雪景色のロマンチックな冬の景観も併せて楽しめる。
中島美嘉の「雪の華」と、脚本家岡田惠和がイメージするオリジナル・ストーリー「雪の華」が、エンディングでシンクロし余韻を残す。人を好きになることの本意を示唆する作品だ。
Ⓒ2019「雪の華」製作委員会
「どついたるねん」「大鹿村騒動記」の阪本順治監督のオリジナル脚本による最新作は、39歳という人生の折り返し点にいる3人の男たちの友情物語であり、夫婦愛の物語、そして父から息子へと繋げる希望の物語である。稲垣吾郎扮する炭焼き職人が、黙々とコツコツと備長炭を作る工程に思わず吸い込まれる興味深い作品でもある。映画は地方都市の山村で炭焼き職人をする紘と、家業の中古車販売を手伝う光彦のもとに、自衛官だった瑛介が突然帰省する所から始まり、目を疑う‘まさか’の結末で終わる。
何となく父親の後を継ぎ炭焼き職人になった紘。仕事にも家庭にも今一つ向き合えない。自衛官をやめた瑛介は、辛い過去から逃れられない。自分はこれからどう生きたいのか?。人生の転機を迎えた男たちのジレンマや葛藤、揺れ惑う複雑な感情を、小さな世界で起こる様々なエピソードと共に、阪本順治という大きな男の目線から描いていく。外の世界を知らない紘と、常にグローバルな視点で世界を見てきた瑛介。そこにユニークなキャラの渋川清彦扮する光彦が加わり、甘辛風味のトライアングル劇が成立した。
アイドル時代では考えられない役柄を土臭く演じた稲垣吾郎の紛れもない転機作であり、今後の俳優人生に期待大だ。心に爆弾を抱える瑛介役長谷川博巳の怪演、脇役陣もお見事。
Ⓒ2018「半世界」FILM PARTNERS
人類が初めて月面に足跡を残した宇宙飛行士ニール・アームストロングの半生を描いたヒューマンドラマ。人生において成功した先駆者は才能と努力が続けられる人と思っていたが、映画を観ると、才能があっても運無くして偉業は達成出来ないと考えが変わった。 映画はアームストロングの視点から、人類初の月面着陸の難題に、乗組員やNASA職員たちの奮闘する姿、人命を失う失敗を繰り返しながら月面着陸計画に挑戦する意義に苦悩をしながらも、月面着陸に成功したアームストロングの姿を描いている。
最高にリアルな映像に心は月面飛行。感動ものである。
©Universal Pictures
DCコミックス原作のヒーロー、アクアマンが活躍するアクション大作。海底にあるアトランティス帝国の王女と、人間の父との間に生まれたアクアマンは、幼少から魚とコンタクトが取れる不思議な力を持ち、海中を時速160キロで縦横無尽に泳ぐ。アメコミ特有の筋肉美を披露するのが「ゲーム・オブ・スローンズ」のジェイソン・モモ。 海底深くにあるアトランティス帝国が地上への侵略が始めようとしていた。未知のテクノロジーを備えたアトランティス帝国を止められるのは、伝説の槍“トライデント”を武器に戦う真の王アクアマン一人だけ・・・。
海中で繰り広げられる誰も見たことのないバトルと、ニコール・キッドマン演じる王女の美しさにうっとり、それだけでも見る価値あり。
©2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics
ギリシャの奇才、ヨルゴス・ランティモス監督の超話題の最新作は、気高く奇怪な独自の世界観で描き上げた禁断の宮廷劇。時は18世紀のイングランド。17人の子供に先立たれた孤独な王女と、王女からの寵愛を奪い合い駆け引きをする二人の侍女。愛と権力が蠢く豪華絢爛、極めて陰湿な宮廷内で巻き起こる女たちの危険な関係…。気性の激しいオリヴィア・コールマン、知性のレイチェル・ワイズ、若さと美貌のエマ・ストーン。各々の存在感を光らせる三大名女優の演技バトルも凄まじい…。
3度のアカデミー賞に輝く伝説の衣装デザイナーが手掛けたドレスも気品に溢れ目の保養になる。ベネチア国際映画祭銀獅子賞(審査員大賞)、女優賞(オリヴィア・コールマン)受賞。
©2018 Twentieth Century Fox
PLトラヴァースの小説をもとに1964年に映画化され、アカデミー賞®13部門ノミネート&5部門受賞した不滅のミュージカル映画「メリー・ポピンズ」が、装いも新たに55年ぶりに帰ってきた。監督は舞台演出家、振付師としても知られる「シカゴ」のロブ・マーシャル。前作の大ファンだと公言するだけあって、その好きさがスクリーンを通し伝わる、まさに夢こごちの世界を提供。実写とアニメーションを融合させた革新的映像はもちろんのこと、観る者たちを裏切らない「メリー・ポピンズ」を蘇らせた。
ピンチに陥ったバンクス一家のために、突然空から舞い降りた魔法使いのメリー・ポピンズ。一風変わった方法でバンクス家の3人の子供たちの“しつけ”を開始する。今作はリメイクではなく、新たに書かれたその後の物語。年をとらないメリー・ポピンズが大人になったマイケル・バンクスのもとに再び現れ、彼の子供たちの教育係として人肌脱ぐというお話になっている。今作のために書き下ろされた新曲とダンスが盛り沢山。難しいことはなーんにもない。昔ながらのミュージカルの手法で楽しませてくれる。
初代ポピンズ役ジュリー・アンドリュースに負けない歌唱力と貫禄のエミリー・ブラント。当たり役に出逢った。頭点灯夫役リン・=マニュエル・ミランダ(ミュージカル俳優)も流石。
©2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved
日本のマラソンの発祥と言われ160年以上にわたり語り継がれる史実「安政遠足」を題材にした「幕末まらそん侍」を映画化。 外国からの脅威で開国間近の幕末。危機を感じた安中藩主・板倉勝明は、藩士を鍛えるため、十五里の山道を走る遠足を開催する。しかし、この行為が幕府への反逆とみなされ藩士不在の城に、安中藩のとり潰しを暗躍する刺客が送り込まれる。危機を知ったのはごく普通の侍、唐沢甚内。しかし彼の正体は幕府から藩中に送り込まれた忍びだった。計画を阻止するため彼はひとり走りだす・・・。 サムライがマラソン?そんな題材を知ったバーナード・ローズ監督は、独創的でインパクトある史実に興味を持ち映画化となった。
しかし武士が走ると、悲壮感と緊張感が 増しもはやスポーツではない。日本人が忘れていた黒沢イズムの太刀捌きが蘇る。
©“SAMURAI MARATHON 1855”FILM Partners
これまで何度も映像化されている人気作家、冲方丁が初めて描いた現代ミステリー小説を映画化。監督は「「トリック」など数々のヒット作を生み出した堤幸彦監督。 閉鎖された病院に、それぞれの理由のもと安楽死をするために集まった12人の少年少女。しかしそこには呼んでいない13人目の少年の死体あった。外部から12人以外に入ることは出来ない、密室で犯人捜しが始まる・・・。
少年少女たちはなぜ死にたいのか?その理由や動機が明らかになっていくが内容が軽い。現代の若い子らの苦悩とはこんなものなのかと、世代のギャップを感じてしまう。しかし原作者の狙いである人間関係や心理の変化は見事に描かれている。
©2019「十二人の死にたい子どもたち」製作委員会
米大統領選挙で最有力視されながら、女性スキャンダルで選挙戦から撤退した米民主党のゲイリー・ハート元上院議員の姿を描いた政治ドラマ。政治には女と金のスキャンダルは当たり前で、これまで数々の作品がスキャンダルから大統領が失脚する姿を題材としているが、今回の場合、大統領選で最有力候補が突然、スキャンダルで辞退したゲイリー・ハート上院議員を描いている。優秀な大統領候補が1つのスキャンダルで全てが終わってしまった。これは過激な報道をするマスコミが悪いのか?報道を聞き暴走する国民が悪いのか?
映画は各自の視点から描かれているが、最も損をしたのは踊らされた国民なのかもしれない。それだけ優秀な人材だったように思えてくる。ヒュー・ジャックマン適役である。
村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を映画化。兵役後、アルバイトで生計を立てる小説家志望の青年ジョンスは、街中で偶然幼なじみのヘミと再会する。そして彼女がアフリカ旅行の間、飼い猫の世話を頼まれる。旅行後、アフリカで知り合ったベンをヘミに紹介されるが、彼は仕事をしないが金を持っているギャッツビーみたいな謎の男だった。「僕は時々ビニールハウスを燃やしています」と、突然秘密をジョンスに打ち明ける・・・。
何が嘘で真実なのか、突然のヘミの失踪に疑念と不安で正気を失っていくジョンス。随所に考えられた何気ない伏線が衝撃的なラストシーンに繋がる。
©2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved
アカデミー賞®作品賞を受賞した「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス監督最新作。公民権運動家の黒人作家ジェイムズ・ボールドウィンの原作を映画化した本作は、人種差別の激しい70年代のニューヨークで、無実の罪で収監された22歳の黒人男性と、彼の子を身ごもり、彼の無実を証明するため不条理な社会と闘う19歳の黒人女性の「愛」と「試練」と「信念」の物語が描かれる。作者特有の瑞々しい筆致がそのまま映像化されたような、残酷さの中にも“淡い光”のみえる作品になった。
妊娠発覚と同時に訪れた試練。差別という大きな壁にどう立ち向かっていくのか。報われぬ愛の形はどうにもやるせないが、だからこそ希望を捨てない二人の姿が神々しく映るのだ。
©2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
家族の在り方をシビアに温かく描いてきたイタリアの名匠ジャンニ・アメリオ監督、待望の最新作は、イタリアのベストセラー作家ロレンツォ・マローネの原作「幸せであることの誘惑」を映画化した、親子の普遍的関係を描いたヒューマン・ドラマ。物語は娘との確執により独り暮らしをする老人が、隣人である子連れの若夫婦が起こした事件をきっかけに、ギクシャクしていた父娘関係に変化が訪れるまでが描かれるが、南イタリア、ナポリの陽気で楽観的なイメージとは裏腹に終始重々しい空気感の中で展開する。
愛人問題で父娘関係に亀裂が入り、独り暮らしをする老人ロレンツォ。隣に越してきた子連れの若夫婦と親しくなり束の間の疑似家族を体験。だがこのささやかな幸せは、若夫婦が起こした事件により、終止符を打つことになる…。普段交流を深めていても、肝心な時に頼りにならないのが“他人”であり、いくら疎遠になっていようと、仲たがいしていようと、いざという時に力を発揮するのが“家族”というもの。映画は、気難しい老人の言行動を通し、血の繋がり=家族の厄介さを語りかけているようにも見えた。
主演俳優の燻し銀の名演技。「しあわせは目指すものではなく、帰るもの」。娘のセリフも印象深く、父娘関係に一筋の“幸せ”が差し込むラストシーンに、胸がじんわり熱くなった。
©2016 Pepito Produzioni
Der Hauptmann
終戦まで一か月の敗色濃厚のドイツで、ナチス将校の軍服を偶然拾った若き脱走兵、ヴィリー・ヘロルトと彼が率いた「ヘロルト親衛隊」の実話に基づく本作は、ハリウッド大作を生んだロベルト・シュヴェンケ監督が、母国ドイツに戻り手掛けた渾身作。名もなき兵士が「軍服」という権力を笠に、瞬く間に支配者へとのし上がっていく極悪非道のあり様を目に余る衝撃映像で描く超問題作。権力を利用する者と、盲従する者。若き兵士の狂気の変貌を通し人間の醜態を抉り出している。
イジメ、DV、パワハラなどが急増する現代社会にも相通じる話。「ヘロルト親衛隊」が現代に蘇ったエンドロール映像に身震いした。
©)2017 - Filmgalerie 451, Alfama Films, Opus Film
第二次世界大戦時のナチス占領下のパリで、レジスタンス活動していたためゲシュタポに連れ去られた夫の帰りを待ち続ける妻の「苦悩」する姿を描く。夫は無事でいるのか、いないのか。帰ってくるのか、来ないのか。不安と闘う妻は夫の帰りを待ち続けることで、愛し続けることに苦痛を感じ始めていく。悩み、葛藤する妻の姿から「愛」という不確かな存在を観る者に問いかける。
意表を突く結末に正直驚いたが、夫婦の「愛の形」さえも変えてしまう“戦争”の惨さを強く感じさせられた。主演女優メラニー・ティエリーが、夫を待ち続ける妻を忍耐強く演じた。
©2017 LES FILMS DU POISSON – CINEFRANCE – FRANCE 3 CINEMA – VERSUS PRODUCTION – NEED PRODUCTIONS
動物写真家・岩合光昭の記念すべき初監督作品。なんにもない小さな島を舞台に、妻に先立たれた70歳の大吉さんと飼い猫のタマさんの、のんびり穏やかな毎日を、島の人たちとの交流を交え描くほのぼの系ドラマ。人と人、人と猫の豊かな触れ合いが観る者を癒してくれる。「猫映画」はこれ迄にも数々あれど、これほどまでに猫の特徴を細かく捉えた映画はなかったし、島の風景と猫のツーショット映像も、写真を見ているようで美しい。これぞ岩合監督ならではの「猫映画」、実に新鮮だった。
監督直々にオファーを受けた落語家・立川志の輔も映画初主演。人の好い爺さんを“寄席での顔”とはまた一味違った旨さで演じ上げた。ふてぶてしい猫のタマさんの名演技も必見。
Ⓒ2018「ねことじいちゃん」製作委員会
大森立嗣監督が初めて挑む「家族の実話」。ガンに冒された母と奇跡を信じる息子の普遍的愛を描いた本作は、WEBサイトで連載された宮川サトシの自伝エッセイ漫画を映画化。突然のガン宣告から看病、看取り、死を受け入れるまでの母と息子の闘病記だが、遺骨を食べたいほどに愛した人と出逢えた喜びと別れの悲しみが綴られた想い出づくりの物語でもある。子供にとって親の死は受け入れ難いものだが、複雑な心情が安田顕演じるややマザコン気味の息子の視点からリアルに描かれ共感を呼ぶ。
母の死から一年後。息子に届いたサプライズプゼントに、海よりも深い母の愛を感じる。倍賞美津子演じる明るくパワフルな母の姿が目に焼き付いた。松下奈緒、石橋蓮司も好演した。
Ⓒ宮川サトシ/新潮社 Ⓒ2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会