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娘の結婚式にも出席せず、これまで家族を犠牲にして園芸の仕事一筋に生きてきた。今は事業に失敗し自宅も差し押さえられ、孤独な90歳の老人になっていた。途方に暮れていたアールは娘を訪ねるが、ちょうど孫娘の結婚祝いのパーティの最中だった。妻と娘に拒否され帰ろうとすると参加者から簡単な運転手の仕事を持ちかけられる。後日、その仕事を受けてみると、それはコカイン運び屋だった・・・。
違法と感じつつ稼いだお金を家族のために使う、この老人の懺悔の気持ちが伝わってくる。 最後に夫を許す妻の「今でも愛してる」という言葉に涙なしではいられない。老いてもダンディなイーストウッド最高である。
©)2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI)LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
60年代のアメリカ。「黒人専用ガイドブック=グリーンブック」を持って差別の色濃く残る南部へと旅をした天才黒人ピアニストと、イタリア系男性の実話に基づく友情物語。このイタリア系男性とは、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務め、「ゴット・ファザー」などマフィア映画に自ら出演したという驚きの経歴をもつトニー・バレロンガという人物。現在映画業界で活躍するトニーの息子ニックが、父親と黒人ピアニストとの深イイ話を50年間ずーっと温め続け念願の映画化となった。
ナイトクラブの用心棒トニーは、威圧的な風貌と度胸の良さを買われ黒人ピアニスト、シャーリ―の運転手として雇われ、“魔”の南部演奏ツアーへと出発するが…。インテリジェンスな黒人ピアニストと、無教養で粗雑な白人運転手。「尊厳」を賭けた二人の珍道中から沢山のことが見えてくる。いつまでも一緒に旅していたいと思う愛着が湧く作品だ。イタリアン・マフィア顔負け、貫禄技のヴィゴ・モーテンセンと高飛車なのに品格があるマハーシャラ・アリ。名演にスタンディングオベーション!
監督は「メリーに首ったけ」のピーター・ファレリー。従来の“ハンディキャップ”を笑いに変えるというテーマはそのままに、オゲレツは排除、まさかの感動傑作を作り上げた。
©2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.
イギリス作家フィリップ・リーヴのファンタジー小説「移動都市」を「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソンがプロデュース映画化。 60分で文明を荒廃させた最終戦争から数百年後、人々は地上を這う移動型都市に移住し、他の小さな都市を捕食しながら資源と人を補充する新たな生活基盤を作っていた。 この地上の“都市が都市を喰う”弱肉強食の世界では、巨大移動都市・ロンドンによって支配が進んでいた。絶望がひしめく地上で一人の少女が新たなる戦いが動き出す―。
宮崎駿から影響を受けファンタジーと「マッド・マックス」の世紀末の荒廃感が混在。いつまでも少年の夢を見続けるピーター・ジャクソンらしさの詰まったおもちゃ箱映画である。
©Universal Pictures
世界で大人気シリーズ「トランス・フォーマー」シリーズの新作。父親を亡くしたショックから立ち直れない少女チャーリー。18歳の誕生日に廃品置き場で偶然見つけたのは廃車寸前の黄色い車だった。その車は突然人型へと変形し、チャーリーの前に立ち尽くすが、不安げな人型生命体を見たチャーリーは「バンブルビー(黄色い蜂)」と名づけ交流をはかっていく・・・。
作品へのこだわりが強い巨匠マイケル・ベイが、今回初めて監督に起用したのはアニメ「KUBOクボ 二本の弦の秘密」のトラビス・ナイト。彼の起用はバンブルビーとチャーリーの感動的な出会いのシーンを生み出した。
©2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. HASBRO, TRANSFORMERS, and all related characters are trademarks of Hasbro. ©2018 Hasbro. All Rights Reserved.
スパイダーマンの訃報で暗く沈んだニューヨークに修行中の若きスパイダーマンの少年マイルスがいた。その力は未熟で自分の力をコントロールできずにいた。ニューヨークは何者かによって時空が歪められる事態によりパニックに陥る中、突然マイルスの前に死んだはずのスパイダーマンのピーター・パーカーが現れる・・・。
オリジナル脚本なので、様々な次元で活躍するスパイダーマンが登場する。未来からが日本のアニメ風のメカを扱う女の子スパイダーマンに豚のスパイダーマン、1930年代風シロクロハードボイルドスパイダーマン、驚く展開もあり、今年のアニー賞受賞も納得の作品である。
黒人刑事が過激な白人至上主義KKKに潜入捜査したノンフィクション小説を鬼才スパイク・リー監督が映画化。 1979年、アメリカでも黒人差別が強いコロラド州の警察署に初の黒人刑事ロンが赴任する。署内の白人刑事に冷遇されながらも、手柄を立てたいロンは、新聞広告の白人至上主義団体KKKのメンバー募集に注目し、電話口で徹底的に黒人差別発言を繰り返し、入会の面接にこぎ着ける。しかし黒人のロンはKKK対面は不可。そこで同僚の白人刑事フリップ・ジマーマンが面接対応する、二人で1人の大胆で型破りな刑事コンビの潜入捜査が始まる・・・。
日本も今後移民が増えた時、差別が起こる可能性を考え、心して観ていただきたい作品だ。
©2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
Mary Queen of Scots
激動の 16 世紀初頭、英国にはふたりの女王がいた。幼少期からフランスで暮らし王妃となった洗練されたスコットランド女王メアリーと、庶子の生まれからコンプレックスを持ち、過去にロンドン塔に幽閉されていた過去のあるイングランド女王エリザベス1世。王位継承権をめぐるライバルであるメアリーとエリザベスは、個々に複雑な感情を抱きながらも互いに認め合い魅了されていた。国の覇権争いで宮廷らの陰謀がうごめく男性社会の中で孤軍奮闘するふたりの女王の運命が別れていく・・・。
華やかさと強さ、それぞれの特長が生かされている。終盤のメアリーがエリザベスに「殺せるものなら、殺してごらんなさい!」とすごむ鬼気迫るシーンは、女の覚悟と意地が伝わる。
©2018 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
男尊女卑の70年代のアメリカで、史上初の「男女平等」裁判に挑み、女性の社会進出の礎を築いた女性弁護士の実話に基づく感動ドラマ。モデルになったのは、ルース・ベイダー・ギンズバークという85歳の現役女性最高裁判事。彼女の功績と勇姿を映画化したいと甥のスティエプルマンが脚本を書き上げた。映画は良妻賢母、頭脳明晰の女性が、「男女差別」の世の中に疑問を抱き、「平等」を勝ち取るまでの苦悩と葛藤、そしてあらゆる裁判官をあっ!と言わせたまさかの法廷逆転劇までが描かれる。
家庭と仕事の両立、まさに女性の鏡のような主人公リースを、「博士と彼女のセオリー」のフェリシティ・ジョーンズが力強く美演。法律さえも変える勇気。女性賛歌のような映画だ。
© 2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC
イラク戦争の原因となった大量破壊兵器はあったのか?疑問から真実を追求した記者たちの不屈の魂を描いた実録ドラマ。「スタンド・バイ・ミー」の名匠ロブ・ライナーは、戦争が起きた真実を国民が知らなければ民主主義がありえないとの信念の元、製作を決める。政府の圧力に屈せず、真実の報道を伝え続けた記者たちのジャーナリズム魂に感服。 2002年、サダム・フセイン政権は大量破壊兵器の保持している、暴走を止める為、イラク侵攻に踏み切ることを宣言したジョージ・W・ブッシュ大統領。
今アメリカで起きているトランプ政府対マスコミも根本はジャーナリズムを守る戦いなのかもしれない。感慨深い映画である。
©2017 SHOCK AND AWE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
仏軍のプラデル中尉の無謀な攻撃命令で出撃したエドゥアールは、戦地で小心者の簿記係、アルベールを助けるが、その代償に顔に重傷を負ってしまう。良家の御曹司でアーティストを夢見るエドゥアールは、家族に戦死したと報告し、戦後アルベールとパリで貧しい共同生活を始める。そんな中、復讐のため壮大な詐欺計画を仕掛ける。
エドゥアールの謎の行動から先の見えない展開にヤキモキするが、顔を隠しているマスクが余計に不気味に感じる。
©2017 STADENN PROD. – MANCHESTER FILMS – GAUMONT – France 2 CINEMA (C)Jerome Prebois / ADCB Films
書店員から“もう一度読みたい恋愛小説第1位”に選ばれた松尾由美の同名小説の映画化。タイムパラドックス(タイムトラベルすることで生まれる時間軸の矛盾)を通じ知り合った男女の運命の恋を描く。「未来から届いた誰かの声」により、命の危機を救われた詩織。同じマンションの住人で小説家志望の平野から「タイムパラドック」が生じたことを知り、詩織の今後の運命は「声の主」が握っているという。平野に徐々に好意を持ち始めた詩織は、その「声」が平野であって欲しいと思い始めるが…。
一途な想いが時空を超える「奇跡の恋」といっても、軸となるのは「タイムトラベル」というミステリアスな題材。サスペンス的要素もある。恋人役の高橋一生と川口春奈も美しい。
Ⓒ松尾由美/双葉社 Ⓒ2019映画「九月の恋と出会うまで」製作委員会
ペネロペ・フィッツジェラルドの原作を、イザベル・コイッシェ監督が映画化。50年代後半のイギリスの海辺の小さな町で、亡き夫との夢だった書店を開店した若き未亡人が、快く思わない町の有力者からの陰湿な扱いを受けながらも、自分らしく生きようと奮闘する姿を描く。いかにも保守的な時代のイギリスといった感じで、作品的には少々地味ではあるが、町の景観も美しく、音楽にも味がある。
よそ者扱いされるヒロインと、孤独な老紳士とのささやかな交流に胸がジーンとくる。主演女優エミリー・モーティマーが着まわすイギリス・オールド・ファッションも素敵だった。
©2017 Green Films AIE, Diagonal Televisio SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.
シンガポールの巨匠エリック・クーが、日本と外交樹立50周年(2016年)を記念し、両国の食文化に着目し製作した人間ドラマで、時と国境を超え、両国のソウルフードが繋ぐ家族愛が感動的に描かれる。日本人の父とシンガポール人の母をもつ主人公の真人。日本でラーメン屋を営む彼は、亡き両親が遺した「味」を探すためシンガポールへと向かう。それは、庶民の舌と心を満たしてきたソウルフード(日本のラーメンとシンガポールのバクテ)を極めると共に、両親の哀しき愛の秘話を知る旅となる…。
監督、映画評論、俳優と多岐に渡り才能を発揮してきた斎藤工が主人公男性をナチュラルに演じ上げる。スクリーンに映し出されるシンガポール料理の数々にも食欲をそそられた。
©Zhao Wei Films/Wild Orange Artists
亡き夫の保険金で慎ましく暮らすシングルマザー、ステファニーと、ベストセラー作家の夫とゴージャスに暮らす妖艶なエミリー。互いの秘密を語り合う親密なママ友となり、エミリーからの「ささやかな頼み」をステファニーが引き受けた時から既に悪夢の計画は始まっていた。巧妙なストーリーが話題となったダーシー・ベルトの傑作小説「ささやかな頼み」の映画化である本作は、ミステリアスなエミリーの失踪事件を皮切りに、先の読めないストーリーが展開するセクシャル・サスペンス。
アナ・ケンドリックスと「ゴシップガール」のブレイク・ライブリー。互いの腹を探り合い、したたかさを競い合う。女の醜態をさらけだす二大女優の演技バトルが凄まじかった(笑)。
©2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
直木賞作家・西加奈子の児童小説の映画化。ひなびた温泉街を舞台に、思春期特有の悩みを抱える少年と、ある日突然“幸せの種”を撒きに現れた謎の美少女との淡い恋を描くファンタジック・ドラマ。監督・脚本は長編第1作「くじらのまち」が国内外で高く評価され、黒沢清監督に師事した鶴岡慧子監督。一筋縄ではいかない西加奈子の不思議な世界観を、より個性的に色づけした。映画は単なる初恋物語に留まらず、大人への階段を昇り始めた少年の目線から、家族再生や町の活性化などのエピソードも綴られる。
14歳にて初主演の山崎光と、スーパー・モデル並みのスタイルの美少女、新音(にのん)の瑞々しさに加え、女好きで粗雑な父親役に草なぎ剛が怪演し、役者としての風格をみせた。
©2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)
俳優として夢破れた男が、ご当地ヒーローとなって夢を実現するヒーロー映画。プロデューサーで原作者、そして主演も務めた和知健明自身の半生をモデルにしている。俳優として限界にあった館アキヒロは妻の妊娠を期に、実家のある福島県白河市に戻るが、父との確執から家業は継がず、警備員として働き始める。同僚から貼ると疲れが取れるパーソナルシートを使用したところ、その晩から不思議な夢をみるようになる・・・。 主要出演者はほぼご当地で働く素人を使っているので、演技はそれなりだが、設定などは細かく、しっかりしたヒーローアクション作品に仕上がっている。
2018年第一回タイ国際映画祭でプロダクション・デザイン賞を受賞、大化けする可能性がある?注目作品である。
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