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奴隷解放運動家で、アフリカ系アメリカ人として史上初めて米ドル紙幣に肖像が採用されたハリエット・タブマンの激動の人生の物語。奴隷として過酷な労働を強いられてきた彼女が、自由を求め決死の覚悟で逃亡に成功。それを機に家族や仲間たちを救いたい一心で奴隷解放運動に尽力を注いでいく。神の伝道師という特殊な能力をもち、不屈の精神で立ち向かう。生涯で800人以上の黒人を助け、南北戦争では黒人兵士を率いて戦った「真の英雄」。その勇姿は、実に神々しく、躍動感で漲っていた。
映画スターの存在感も抜群。本年度アカデミー賞®授賞式で披露したテーマ曲「スタンド・アップ」も本編でじっくり聴くことが出来る。
©2019 Universal Pictures International, Focus Features LLC and Perfect Universe Investment Inc.
80年代から2010年代の激動の中国を舞台に、息子を亡くし喪失感の中で生きる夫婦と、その原因を作り罪悪感の中で生きた夫婦の“一人っ子政策”が生んだ30年間に渡る愛と友情の物語を描く185分の超大作。原題の「地久天長」とは、「蛍の光」のこと。本編では度々流れ印象を残すが、それは苦難続きの主人公夫婦の歴史を「哀歌」として憐み「賛歌」として称えているようだった。監督は中国第六世代の名匠ワン・シャオシュアイ。本作でベルリン国際映画祭銀熊賞受賞、最優秀男優賞、女優賞W受賞に輝いた。
中国の地方都市。同じ工場に勤め、同じ日に男の子を授かり、家族ぐるみの付き合いをしていた二組の夫婦。だが主人公夫婦ヤオジュンとリーユンの息子シンが、友人夫妻の息子ハオに誘われて行った川で命を落とし、互いの夫婦間に大きな溝が生じてしまう。一人っ子政策により、二度と自分の子を産めなくなったヤオジュンとリーユン夫妻は、工場をリストラされたこともあり、誰も知らない小さな村で養子をとり、慎ましく暮らし始めるが…。過去と現在が複雑に交錯、大まかなあらすじはチェクしておこう。
癒えぬ悲しみの中で細やかな幸せを探し生きる夫婦と、方や富裕層になりながらもどこか満たされない夫婦。異なる夫婦に与えた30年間の試練、「赦し」と「後悔」を描いている。
©Dongchun Films Production
家族や夫婦をテーマにした作品を数多く執筆してきた小説家・重松清の原作を、「大人ドロップ」「虹色デイズ」の飯塚健監督が映画化。妻に先立たれた夫と、母を亡くした幼い娘。“仕事“と“子育て”の慣れない生活の中で沢山のことを学び、少しずつ成長していく父と娘の10年間の物語。トップセールスマンからシングルファザーへ。主人公健一には「全裸監督」の山田孝之。怪優の顔とは真逆な等身大男性を好演。年代別の3人の子役とも息ピッタリ。普段お目にかかれない優しい父親の顔を見ることができた。
國村準、余貴美子。危なっかしい二人を温かく見守るベテラン勢。人は愛を感じることが出来れば、強くも優しくもなれるし、頑張れる。すべてが愛情に包まれている文句なしの作品。
Ⓒ2020映画「ステップ」製作委員会
芸人で芥川賞作家・又吉直樹原作の「火花」に続く映画化。売れない劇作家・永田と、彼を支える女優志望の恋人・沙希の7年間の恋愛模様を描く。原作者・又吉氏が「恋愛というものの構造を理解できていない人間が書いた恋愛小説」と語ったことを受け、恋愛映画の名手「GO」「ナラタージュ」の行定勲監督が、小説の世界観を汚すことなく繊細に描出したことで、夢を追う未熟な男女が交わしたどうしようもない時間が、やけにいじらしく心に刻まれると共に、もどかしさを感じさせる究極の恋愛映画になった。
「青春」に生き悩む若者達が集う街、下北沢・渋谷・井の頭公園等が舞台になったのも、昭和の青春ドラマを思い出させる。全精力で挑んだ主演の山﨑賢人・松岡茉優の健闘も光った。
©2020「劇場」製作委員会
発明王エジソンとカリスマ実業家ジョージ・ウェスティングハウスのアメリカ初の送電方式をめぐる“直流”方式と “交流”の覇権争いを映画化。映画では名声があるエジソンの形振り構わぬ傲慢なやりかたが浮き彫りになる。しかし巨万の富には執着は無く、ただ純粋に誰もやっていないことを目指す姿は研究者のお手本ともいえる。しかし歴史を見れば勝ったのはカリスマ実業家ジョージ・ウェスティングハウスサイド。その会社が現在のゼネラルエレクトリックである。
19世紀末、アメリカは電気の誕生で新時代を迎えていた。実業家ウェスティングハウスがエジソンと違う交流式送電を成功したことに激怒し、ネガティブキャンペーンや訴訟行為や裏工作が仕掛けビジネス抗争へと発展に・・・。
©2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.
エイリアンに管理・支配された未来の地球で自由を得るために戦うレジスタンスの姿を描いた近未来SFサスペンス。圧倒的な力の差で制圧され、地球外生命体に侵略された2027年のシカゴ。「統治者」と呼ばれるエイリアンの管理下アメリカ全市民は、身体にGPSが埋め込まれて死ぬまで監視される立場にあった、街は貧富の差が拡大し荒廃するなか、自由を求めてレジスタンスグループが立ち上がる。彼らは市内スタジアムで開催される「統治者」の団結集会への爆弾テロを計画する・・・。
出てくる円盤やエイリアンの姿がSFらしさが王道的なイメージでSFファンが求める映像や展開ではあるが、それ以上にサスペンス要素が強い。
©2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.
「ブラック・スワン」のオスカー女優ナタリー・ポートマン主演作。同級生による銃乱射事件の被害者少女が、事件のトラウマを引き釣りながらも、誰をも魅了する“ポップスター”になっていくまでの、光と影の人生を描く異色作。アルコールに溺れ、情緒不安定なヒロイン、セレステをナタリー・ポートマンが、ドギツイメイクで怪演。ポップスターでありながら、思春期の娘の母親という役柄を演じきった。スパンコールギラギラの総タイツ姿で歌い踊るカリスマ性に、偉大なる変貌を感じた。
最初にエンドロールが流れた時は、物語を逆から追い物議を醸したギャスパー・ノエの「アレックス」を思い出した。
©2018 BOLD FILMS PRODUCTIONS, LLC
「ムーンライト」のスタジオAが、新鋭トレイ・エドワード・シュルツを脚本・監督に迎え放つ青春音楽映画。マイアミで暮らすアフリカ系アメリカ人の兄妹とその家族を主人公に、彼らの人生に“波”のように押し寄せる苦悩と挫折、再生と希望が描かれる。今を象徴する全31曲の音楽と、ヴィヴィトな映像美が最大のチャームポイントになっている。映画の前半はレスリングのスター選手の17歳の兄タイラーの栄光から挫折まで、後半は兄の影に隠れ目立たなかった妹エイミーの愛と成長物語が綴られる。
兄タイラーが立ち向かう波、妹エイミーに訪れた波。青春の荒波を乗り越えた先には必ずや家族の存在がある。独創的で斬新な作りだが、「愛と絆」という普遍的テーマが隠れていた。
©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.
イギリスの詩人バイロン卿に「この世のエデン」と称されたポルトガルの世界遺産の町シントラを舞台に描くある家族の美しい愛の物語。エリック・ロメールを意識した神秘で幻想的な映像美が興味をそそり、フランス映画特有のゆったり感が心地よく感じられる作品だ。主人公は女優フランキー。自らの死期を悟った彼女は、親族・親友をシントラに呼び寄せ、彼らの幸せを願い一芝居打つところから始まる。複雑で問題だらけの家族が過ごす“夏の終わりの一日”。
大女優イザベル・ユペール。監督への猛アピールの末に掴んだ役。演技に信憑性が生まれた。仏・米・英豪華キャストにも注目。
©2018 Photo Guy Ferrandis / SBS Productions
小品でありながら口コミが広がり、全米トップ10入りの大ヒットを記録、数々の賞に輝いた感動作。中国系アメリカ人の女性監督ルル・ワン監督の実体験を基にした<嘘>と<ホント>の物語が描かれる。余命3か月の祖母に真実を告げず、祖母との別れを惜しむため、結婚式という<嘘>をつき親戚一同が集まるというお話で、NY生活が長い孫娘ビリーが、祖母のいる中国へと帰省するところから始まる。言葉や文化の違いはあれ、大切な人を想う気持ちは万国共通。
第77回ゴールデン・グローブ賞で主演女優賞受賞のオークワフィナの演技にも注目だが、モダンな祖母の存在感が際立った。
©2019 BIG BEACH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
島根県西部を流れる日本一の清流「高津川」。日本遺産にも登録されている伝統芸能「岩見神楽」と共に、古き良きものを守り、親から子へと“大切なもの”を受け継ぎ生きる人々の物語。過疎化、後継者、高齢者問題等、今を生きる私たちが目を背けたくなるテーマを掲げながら、緑深き自然が教えてくれる人々の温かな絆。当たり前に過ごす日々こそが、何よりもかけがえのない時間であること。「RAILWAYS- 49歳で電車の運転手になった男の物語-」の錦織良成監督のシンプルなメッセージが心に届く感動作。
人と人との交流が清らかに流れる郷土色豊かなストーリー。映画初主演の甲本雅裕を、戸田奈穂、高橋長英、奈良岡朋子らがサポート。新人、石川雷蔵も「岩見神楽」を頑張った。
©2019 映画「高津川」製作委員会
「野獣死すべし」「探偵物語」などハードボイルド傑作を生みだしてきた丸山昇一脚本によるハードボイルドコメディ。市川進、御年74歳。彼は巷では伝説の殺し屋と噂されている。しかし本当の正体は、古き良きハードボイルドを極めた?小説家だった・・・。18年ぶりの映画主演の石橋蓮司は最高だ、昼間はゴミ出しをする冴えない小説家だが、夜はハードボイルドな小説家で、一部では伝説の殺し屋?と噂される、このギャップの大きい2つの顔の主人公を見事に演じている。殺しの依頼を持ち込むのは安保闘争時代から付き合いの元ヤメ検弁護士石田役には岸部一徳が演じる。
盟友の二人が70歳を超えて一緒に映画を取る様は、未だ青春時代が終わらずといったコメディ要素を含んだ本格ハードボイルド作品。
©2019「一度も撃ってません」フィルムパートナーズ
クォン・サンウ主演の韓国映画「悲しみより、もっと悲しい物語」を台湾の新鋭監督ギャビン・リンがリメイク。余命わずかな青年Kと、Kが誰よりも大切に想っている女性クリームの切ない恋物語。韓国オリジナルに新たな登場人物を加え、台湾映画らしい瑞々しさが添えられた本作は、「人を愛すること」のいじらしさが心に響く珠玉作。高校時代に知り合い、親友以上恋人未満の関係を続けてきた天涯孤独の2人。死を目前にしたKはクリームに真実を告げぬまま、彼女が幸せになるためのある準備を始めるが…。
命を賭け愛する人を想うK役リウ・イーハオは綾野剛の雰囲気をもつイケメン俳優。アイビー・チェン扮する魅力的なクリームの視点から語られる“もう一つの物語”にも感動した。
轢き逃げ事件の加害者の父と被害者の父が運命的な悲劇に巻き込まれる猟奇サスペンス。エリート政治家と労働者の対比的描写もあり、これが今の韓国映画の主流なのかもしれない。 選挙戦が迫る市議会議員のミョンヒの息子が、ひき逃げ事件の起こす。隠ぺい工作中に家族に見つかりミョンフェは事件の真相をもみ消そうとするのだが、現場には被害者の新妻がいたことが判明する。
事実が明るみに出ることを恐れたミョンヒは、失踪中の新妻の行方を追う。被害者の父親も、新妻が死んだ息子の子供を妊娠していることを知り、彼女を捜し始めるのだが・・・。
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